どこのオーケストラを見ても、ヴィオラパートは慢性的に人手が不足しています。
ですから3月から4月にかけての新歓シーズンになると、大学オケのヴィオラパート員はできるだけ多くのヴィオラを獲得しようと目の色が変わるのです。
ヴィオラパートはヴァイオリンのように、放っておいても人が入ってくれるパートではありませんから、こちらから積極的にアピールしていかなくてはなりません。
そこで、どのようにアピールしていくかがパートの死活問題となってきます。
テレビコマーシャルに学ぶヴィオラ新歓
テレビコマーシャルは、企業が自社の利益を上げるのに重要な手段です。
そのほとんどが1分以内のもので、企業はその短い時間内にいかに視聴者にアピールできるかに命を懸けています。
ヴィオラ新歓も新入生が私たちの話に飽きるまでの短い時間に、いかにヴィオラをアピールできるかが命ですから、テレビコマーシャルと共通する部分が多いと私は考えます。
では、企業は短いコマーシャルでどのように商品や企業自体の魅力を伝えているのでしょうか。
価値を伝える作業
多くのテレビコマーシャルに共通することは何でしょうか?
それは、「簡潔に力強く商品の価値を伝えている」ことです。
価値とは、「この商品を買うことでどれだけ幸せになれるか」「この商品でどのように人生が変わるか」と言ったことを指します。
具体例を挙げましょう。
例えば食品の宣伝の場合、その食品を食べた芸能人や俳優がなんとも幸せそうな顔をする映像が流れます。
これは、「この食品を食べるとこんなに幸せな気持ちになれますよ」と視聴者に訴えているのです。
次に香水の宣伝の場合、その香水をかけた人が歩くと、その良いにおいをかいだ人びとが一斉にこちらを向く、という映像が流れます。
これは、「この香水をかけることで、周りの注目を一気に集める主役の人生が送れますよ」と訴えているわけです。
機能や成分の説明は後回し
コマーシャルでは製品の機能や成分を伝える場合もありますが、それは価値を伝えた後に「ついでに」伝えられることがほとんどです。
機能や成分は商品の価値を強化する一つの要素であるとも考えられますが、その説明に終始しているということは、ほとんどありません。
化粧品の宣伝で、「この化粧品は高級プラセンタ配合でこんな臨床データがある」と言って数値を示されても、あまり伝わってこないですよね?
だから、ほとんどのコマーシャルでは「価値」の訴求が最優先されるのです。
ヴィオラ新歓も価値を伝える作業
ヴィオラ新歓も新入生にこのオーケストラでヴィオラをやる価値を伝えることに全力を注ぐべきです。
このオーケストラでヴィオラを始めることでどれだけ幸せな音楽人生を送ることができるのかを伝えるべき、とも言い換えられます。
例えば、パートの雰囲気が暖かくて練習が楽しくなる
であるとか、
指導に力を入れているのですぐに上手くなり、他パートからも重宝されるようになる
などの「このオケでヴィオラをやる価値」を伝えるのです。
しかし、人によって「価値」の感じ方は異なります。
よって、以下に述べることも意識する必要が出てきます。
新入生の話を良くきくことでニーズをつかむ
パートの価値を伝えたら、今度はしっかりと新入生の話をききましょう。
できるだけ食事会の場などが良いでしょう。
話を聞くといっても、漫然と聞くのでは意味がありません。
・どのような音楽経験があるのか
・どうしてこのオケに興味を持ったのか
・もしこのオケに入団したらどうしたいか
などと新入生がオーケストラ活動に求める「ニーズ」を聞き出すのが大事です。
企業も売り上げ統計、アンケート調査、SNS調査など様々な手段を駆使して顧客のニーズを探り、コマーシャルに反映しています。
新歓においても「ニーズ」の把握が大事になると思います。
もし、新入生が「人間関係」を重視する人だと思ったら「パートの暖かい雰囲気」などを積極的に伝えていきますし、「上手くなりたい」という意識が高そうであれば「指導が熱心であり、みんな上手くなっている」ことを伝えていけばよいのです。
最後に「入団を阻む壁」を取り除いてあげることが大事
価値を伝えニーズに応えても必ずしも入団に至るとは限りません。
なぜかというと、その新入生に何らかの「入団を阻む壁」があることがあるからです。
それは、人間関係の不安であったり、練習場所と家の距離であったり、人それぞれです。
新入生の話を聞きこみながら、本人が持つ不安要素をくみ取り、解消してあげると入団、さらにはヴィオラを選択してもらえる可能性はさらに高くなります。
目的意識を持ったコミュニケーションでヴィオラ奏者をゲット!
以上のように、価値を伝え、ニーズにこたえ、壁や不安を取り除くという3点を意識しながら、新入生とコミュニケーションをとることがヴィオラ新歓のポイントです。
伝えるべきことは伝える一方で冗長になり過ぎないことも大事です。
明るく楽しく新入生とのコミュニケーションを楽しみ、ヴィオラパート員を確実にゲットしましょう!
おしまい。